医療シリーズ:高周波を用いた新たな治療の可能性
〜「削らない、痛くない、抜かない、薬だけに頼らない」生体の自然治癒力を生かしたしか治療法として近年、大いに注目を集めているジアテルミー(高周波治療)は、今後も口腔内領域での応用が期待される理学療法の一つである。〜
【特別寄稿】
高周波治療研究会 顧問 竹内 義和
竹内歯科クリニック 院長
 
歯科治療への適応が広がるジアテルミー
ジアテルミーとは、「透熱療法・温熱療法」と訳され、約100年前に作られた医学用語ですが、今日では高周波治療全般を意味します。
高周波電流を患部と患者さんの手(対極)の間に流し、生体の電気抵抗値から発生する(ジュール)熱を利用する「外科的ジアテルミー」と、電波を患部に照射して高周波の生物学的作用を活用する「内科的ジアテルミー」があります。この特異な高周波(510KHz、35W)を発生させるのが、コスモぺリオエンドシステム(写真1参照)です。


写真1.コスモペリオエンド治療器

外科的ジアテルミー
一般的には家庭の電熱に相当します。<応用例>歯の神経(歯髄)を取る抜髄は、高周波通電で根管内歯髄を熱(270℃)で焼灼固定すると同時に殺菌も行います。従来法に比べて治療効果はより確かで、再発しにくい治療法といえます。感染根管治療では、薬剤の変わりに熱消毒します。この時の熱は電極の先端1mmの範囲なので、痛みはほとんど感じません。
歯周病治療では、歯垢・歯石除去、食事療法と併行してポケット内を熱で殺菌と不良肉芽の掻爬(組織をかきとる)を同時に行います。薬剤耐性菌も死滅させられるので、外科手術をせずに骨再生が得られる症例があります(写真2参照)。今までに抜歯していた歯が残せたり、延命効果を期待できる症例が全国から報告されています。ただし、歯周病は生活習慣病ですから、生活習慣を改め、口腔内を清潔に保つことが基本です。

写真2.ジアテルミー治療後に骨再生した重度歯周病例
内科的ジアテルミー
電子レンジを考えると理解しやすいと思います。電波を患部に照射して患部に電解をつくり、毎秒51万回の高速で分子運動させます。この分子の衝突運動が、分子間に摩擦熱を発生させます。その結果、局部(病巣部)は約2℃ほど上昇します。これをマイルド加熱と言います。
温熱効果として
(1)微小血管の拡張
(2)痛覚閾値の上昇→鎮静効果
(3)創傷治癒の促進
(4)化骨促進作用
などがあります。
これらの作用は、高周波の周波数、波形、波長、パルス変調により効果は大きく異なるので、高周波ならすべてが同じ効果を得られるとは限りません。現在、HSP(熱ショック蛋白)の局所産生によることも解明されつつあります。この方法は、電波を照射するだけなので、患者さんの身体的な負担、苦痛はありません。
<応用例>歯周病治療は、ポケット外側から施術します(外科的にはポケット内側から)。また、知覚過敏症治療は、薬剤を使わずに数分で痛みから解放されます(痛覚閾値を上げます)。口内炎・ヘルペスでは、痛みはその場で消失し、治癒までの期間は通常法の3分の1程度に短縮できます。

歯科ジアテルミーの可能性と今後の展望
抗生物質が開発されとかく薬剤万能になりがちな風潮にありますが、薬剤耐性菌の問題や患者さんの投薬に関する意識の向上、また薬剤投与が好ましくない妊婦や高齢者に対して、今後は局所化学療法(LDDS)と併用した理学療法(ジアテルミー)が見直され、患者さんの健康に寄与するものと思われます。
   
竹内 義和 (たけうち よしかず)
神戸大学工学部(電気化)中退。大阪歯科大学卒業。和歌山県立医科大学大学院(口腔外科)博士課程卒業、医学博士。和歌山県立医科大学応用医学研究所の免疫アレルギー部門で細胞性免疫、特にリンパ球を長年研究(癌〈がん〉免疫、扁桃腺〈へんとうせん〉に関する論文多数)。医学と機械電気関係に造詣が深い。現在、口腔外科・インプラント・歯周病を中心に、和歌山市で開業。講演活動、論文発表と精力的に活躍する。