歯科とジアテルミー(高周波電気治療)
- いま話題の内科的ジアテルミーについて -



Yoshikazu TAKEUCHI
竹内義和
竹内歯科クリニック


筆者は、これまで高周波治療器(Cosmoシリーズ・(株)コスモデンタル)を応用した口腔領域への高周波電気治療に関ずる論文1〜4)を発表してきた。
ジアテルミー(Diathermy)は電波の範囲の高周波を用いる治療法であるが、使用者の間でもその原理や作用機序が十分に理解されず、混迷しているようである。そこで、歯科界で初めて歴史的背景、原理・作用機序、理学療法としての位置付けに成功したので、今回は、とくに内科的ジアテルミーの口腔領域への応用法について詳述する。

【Key Word】
外科的ジアテルミー
内科的ジアテルミー
ハイブリッドジアテルミー


高周波電気治療とは

1.歴史的背景

 高周波電気治療の歴史は古く、1887年のHertzによる電磁波の実験的発生にまでさかのぼる。身体に低い周波数の電流を通すと、筋肉の収縮・痙攣などの刺激作用が生じ、約3,000Hzまでは周波数の増加とともに刺激が強くなるが、周波数がそれ以上になると逆に刺激が弱くなり、10KHzではほとんど刺激を感じなくなって温熱作用(ジュール熱)が発生する。この点に着目して、1892年に生理学者のd'Arsonal(仏)は高周波電気治療を始めた5)。また、1895年にはZeynekが花火ギャップ(スパークギャップ)方式で発振させた高周波を用い、電極を付けて通電するジアテルミーを創始した。内科的目的で開発されたが、急性疾患には禁忌であり、また、当時は金属電極を用いていたために火傷のおそれがあり、外科的ジアテルミーに転用された。
1904年に真空管が発明され、医療面でも真空管方式の電気メスが開発され、電気切開と電気凝固が行われるようになった。その後、トランジスタを用いたソリッドステート方式へと移行していくことになる。

2.ジアテルミー (Diathermy)
 ジアテルミーとは、Nagelschmidtによって命名された造語であり、ギリシャ語の接頭語dia(through:透過、横切る)とラテン語のtherm(thermal, heating:温熱)からなり、日本語では“透熱療法、温熱療法”と訳されている。現在では、高周波電気治療全般にわたる広義な用語として使用されている。
ジアテルミーは、外科的ジアテルミーと内科的ジアテルミーに分類される (1930年ごろから)。電磁波のうち通信に利用される範囲の高周波を電波というが、この高周波電流を身体に通電する方法を外科的ジアテルミー(電気外科・通電法)と呼び、切開、凝固、止血(COSMO i cure:type fの場合は抜髄、歯髄切断、生切、その他)ができる。これに対して、電磁波自体の作用に基づき電流を通電しない治療法が内科的ジアテルミーである。
表1、2に、その差異の一覧を記す。


表1
 ジアテルミー(作用による分類)

表2
 3種類のジアテルミー(波長による分類)

図1
 非接触モード表示で使用中のCOSMOiCURE(type e)
 

図2
 高周波治療器の原理。一般治療器のなかには対極板とメス先電極を組み合わせたmono polar systemがあり、この場合は対極板が不要
 
3.わが国における超短波療法
  わが国では、1930年代に超短波治療器(伊藤超短波)が開発され、盛んに研究が行われたが、1950年に入って抗生物質の開発と化学療法の研究が主流になり、超短波の殺菌・抗毒作用は注目されなくなった。しかし、戦後しばらくの間は各科での超短波療法による有効治験例が報告され、とくに耳鼻科においては、1978年に耳鼻咽喉科高周波電気治療研究会が発足し、一部臨床家によって現在も活発な研究が続けられている7)
最近、欧米では整形外科とリハビリ科5)で物理療法のなかの電磁気療法の一つとして、おもにリハビリ目的に使用されている。わが国においては、悪性腫瘍に対する電磁波温熱療法(Hyperthermia)としての研究8)が盛んである。大規模なジアテルミー装置を用いる悪性腫瘍の電磁波温熱療法には短波とマイクロ波が応用されている。

4.内科的ジアテルミー(超短波)の生物学的作用
  内科的ジアテルミーでは、短波(Short Wave:狭義の短波ジアテルミー/周波数:10〜100MHz、波長;3〜30m)やマイクロ波 (周波数:300MHz〜300GHz、波長;.1mm〜1m)を用いて、それらの電磁エネルギー(electromagnetic energy)によって組織内に熱を発生させる。
 短波放射線(広義の短波ジアテルミー)はラジオ周波数(周波数 3KHz〜300MHz、波長 1m〜100km)内にあり、極低周波(ELF)とマイクロ波放射線の間に位置する5)(図1、2)。イオン化作用をもたず、分子結合を破壊することもイオンを産生することもないため、治療目的に医療用として利用されている。

図3
 高電界内での誘導体の分離。波電界下の分子運動
 
 筆者が使用しているCOSMOは510KHzであり、ラジオ波(Long Wave)ジアテルミー (LWD:Long Wave Diathermy)に属する。
波長的には外科的ジアテルミーに属するが、金属電極を離すことによって電界として働き、電波を飛ばすことができる点が過去にない特徴である。

5.内科的ジアテルミー(超短波)の生物学的作用
 超短波の生体作用については、1926年以後Schliephake 6)を始めとして多数の研究9)~13)があり、特徴として次の作用が挙げられる。
(1)微少血管の拡張→血液循環がよくなる
(2)温和な透熱の深達性
(3)殺菌・抗毒素作用→結核菌の殺菌作用、ジフテリアにおける抗毒素作用など多くの研究14)がある。ペニシリンなどが開発されるまでは、抗生物質の代わりをしていた
(4)抗炎症作用
(5)鎮痛・鎮静作用
上記の諸作用が総合的に作用して身体の抵抗力を高め、化膿性炎症が抑制されるのである。

6.内科的ジアテルミーの温熱作用
 電界治療における温熱産生(誘電加熱)の機序は次のように説明される15、16)
電界内では、生体の水(H2O)分子は有極性分子構造になっている (図3左)。このような酸素と水素の立体的結合は、等価双極子として表わされ、このような有極性分子に電極を挟んで一定方向の電界を加えると、電極の+側には有極性分子の-極が、-側には+極が整列する(図3中・右)。この状態を配向と呼び、電界の方向が逆に変化すれば配向も逆向きになる。510KHzの電界では、毎秒51万回の高速で極性が変化する。水分子の等価双極子の配列も同じ数だけ変化し、猛烈な分子の衝突運動が生じて分子間に摩擦熱(誘電熱)が発生することになる。

7.SWDの適応症(疾患別分類)
超短波療法 (SWD:Short Wave Diather-my)には、(1)温熱の深部への透過、(2)末梢血管拡張による新陳代謝の促進、(3)頸部や腰部の交感神経節への透射は交感神経の緊張を緩和し、(4)副交感神経優位に作用することによる鎮静効果、(5)殺菌作用を伴う抗炎症的な消炎・鎮痛効果がある。そのため、表3のように広汎な適応症が挙げられている
17)

8.内科的ジアテルミーの禁忌症5,17)
  (1)金属製の装身具、ヘアピン、ペースメーカー埋入患者、接合用の骨釘を付けた部位は電界における磁力線に異常をきたす(ラジオ波使用の場合は歯科チダンインブラントは使用可能)
(2)出血性疾患、出血傾向のある患者
(3)痛覚・温度感覚に異常があり、感覚表現ができない患者
(4)血行が乏しく、温度感覚の鈍い組織(眼球・睾丸)
(5)脳(脳は、12.5cmの波長に共振しやすいため、頭部へのマイクロ波照射はとくに注意が必要)
(6)成長期小児の骨端部、妊婦および月経期間中の婦人科領域の患者
(7)悪性腫瘍の患者
(8)過熱感がわからない認知症の老人、治療中の注意が守れない2歳以下の幼児
表3 SWDの適応症(疾患別分類)
○神経疾患:神経炎、神経痛、末梢神経麻痺、中枢神経系疾患、脳梗塞後遺症、小児麻痩、不眠症、白律神経失調症、等
○運動器疾患:リウマチ性関節炎、五十肩、変形性関節症、筋肉リウマチ、背筋強直症、打撲・捻挫.肩こり、腱鞘炎、筋痛、腰痛、関節周囲炎、関節強直の防止
○循環器疾患:狭心症、レイノー氏病、間欠性片頭痛
○消化器疾患:噴門痙攣、幽門痙攣、便秘、慢性胃腸炎、大腸機能異常
○呼吸器疾患:気管支炎、気管支喘息、気管支拡張症
○泌尿器・生殖器疾患:膀胱炎、腎炎、ネフローゼ.慢性子宮炎、付属器炎、慢性前立腺炎
○産科・婦人科疾患:子宮付属器炎、子宮内膜炎、子宮周囲炎、膀胱炎
○耳鼻科疾患:急性・慢性鼻咽頭炎、慢性扁桃炎、急性アンギーナ、滲出性中耳炎、慢性中耳炎、耳管機能不全、耳管狭窄症、アデノイド、副鼻腔炎、化膿性外耳道炎、リンパ節炎
○眼科疾患:眼瞼膿疱、涙嚢炎、眼瞼麦粒腫、ブドウ膜炎、角膜炎
○内科系疾患:血行障害、血液系疾患、内臓疾患、耳下腺炎.神経性胃腸疾患、結核、アクチノミコーゼ
○皮膚科疾患:帯状疱疹、湿疹、せつ腫、癰疽、ひょう疽、ニキビなどの炎症性体表疾患、凍傷
○歯科ロ腔疾患:歯肉炎、口腔粘膜の炎症、歯周疾患、顎関節症、Hys、アフタ、ヘルペス(単純・帯状)、ドライマウス、シェーグレン症候群、小児の疼痛を伴う歯科治療、その他(Hys以下は著者が加筆)
図4a
 8/22/2005。アフタ出現4日目。
照射前
 
図4b
 8/22/2005。ケナログ(R)を局所塗布して照射(5分)
 
 
 
図4c
 8/23/2005。患者は翌日には疼痛から解放された。照射5分
 
図4d
 8/24/2005。2日後、患者は臨床症状をまったく感じなくなった。
照射5分
 
図4a〜d 症例1:アフタ性ロ内炎
図5a
 8/22/2005。照射前。大きく開口できない。5分照射
 
図5b
 8/23/2005。翌日には開口に不自由がなくなった
 
図5c
 8/24/2005。2日後完治(90%治癒)。口紅が塗れると喜んでくれた
 
図5a〜c 症例2:口角炎

口腔疾患への応用例

◆症例1:アフタ性口内炎(図4)

患者:57歳、女性
治療経過:上唇部のアフタに内科的ジアテルミーにより、5分間の照射を行う。照射直後に疼痛は消失した。照射時には、化学療法(LDDS)を併用すると劇的な早さで治癒する。
早期にQOLを高めることができる。

◆症例2:口角炎(図5)
患者:57歳、女性
治療経過:化学療法(ゲンタシン(R)の局所塗布)を併用することで、2日後には患者本人が完治と思うほど創傷の治癒が早かった。
図6
 症例3:外科手術。7/27/2005.
縫合部に5分照射(化学療法と併用))
 
図7
 症例4:扁平苔癬。12/9/2004。
扁平苔癬。アンテベート(R)、アクロマイシン軟膏(R)、フロリードゲル(R)、アスピリン(R)の混合軟膏を併用
 
図8
 症例5:単純ヘルペス。4/1/2005。
単純ヘルペス。照射前。内科的ジアテルミーの最適応症の1つ
 
図9a
 3/10/2005。術後6日目より皮下出血斑出現
 
図9b
 3/7/2005。フィクスチャー埋入とGBR(チタン膜使用)によるAUGUMENTATION手術
 
図9a〜d 症例6:内出血
 
図9c
 3/10/2005。10分照射
 
図9d
 3/15/2005。5日目に完全消失。照射5分
 
◆症例3:外科手術(図6)
患者:61歳、女性
治療経過:筆者は、口腔内の各種外科手術後の治癒促進と術後疼痛の軽減のため、術直後
に照射している。症例は、インブヲントの二次手術直後の照射である。

◆症例4:扁平苔癬(図7)
患者:56歳、男性
治療経過:舌下面にできた扁平苔癬.自己免疫疾患であるが、化学療法の局所塗布と内科
的ジアテルミーで難治性の粘膜病変でも早期にQOLを高めることができる。

◆症例5:単純ヘルペス(図8)
患者:61歳、女性
治療経過:前鼻孔入り口にできたヘルペスで、一部痂皮形成がみられる。アナセラ軟膏(R)と内科的ジアテルミー10分の照射を行う。瞬時に神経痛様疼痛が消失した。
図10a
 3/25/2005。 2回/週の間隔で、毎回10分照射
 
図10b
 1/14/2005。 手術。500円硬貨大の領域が麻痺。術後約2ヶ月余りで80%の知覚回復が得られた
 
 
 
図10c
 7/13/2005。口腔内
 
図10d
 このアプリケーターは、上下前歯部の照射に適している
 
◆症例6:内出血(図9)
患者:60歳、女性
治療経過:にフィクスチャーを埋入し、GBR(チタン膜使用)の術後に左顎下部に皮下出血斑を認めたため、温湿布や他の理学療法、化学療法は行わずに内科的ジアテルミーで処置した。

◆症例7:オトガイ神経麻陣(図10)
患者:70歳、女性
治療経過:にフィクスチャーを埋入する際、
神経終末に損傷を与えたためか、術後に左側オトガイ神経分布領域に麻痺感を訴えた。女性の場合は化粧、男性の場合はひげ剃りなどが十分にできず、かつ患者との信頼関係を損なうことがあるため、できるだけ早期に回復させる必要がある。化学療法や他の理学療法はまったく行わず、2回/週の内科的ジアテルミーの照射のみを行った。術後約2ヶ月余りで80%の知覚の回復が得られた。

◆症例8:矯正治療(図11)
患者:10歳、女児
治療経過:装置交換時や歯牙移動量が多い場合には、処置後2〜3日間疼痛が生じる。装置装着時に術前照射しておくと、移動がたやすく疼痛も少なくなる。

◆症例9:化膿性炎症性の牙関緊急(図12)
患者:60歳、女性
治療経過:に起因する開口障害である。開口度は切端部で4〜5mm、化学療法で局所炎症と疼痛は消失したが、強度の開口障害が残った。タケノコ型(SCREW型)開口器を挿入し、激痛に対しては咬筋外側に内科的ジアテルミーを照射しながら、除々に開口度を上げるトレーニングを行う。まさに、理学療法のストレッチとジアテルミーの併用である。
2ヵ月で(2〜3回/週)ここまで開口できるようになった。
図12a
 6/15/2005。開口器の挿入にも苦労した
 


図12a、b 症例9:化膿性炎症性の牙関緊急
図12b
 8/25/2005。3横指の開口に約2ヶ月を必要とした
 
図13
 症例10:SjOgren Syndrome。左右の耳下腺(10分)、顎下腺(5分)の照射。10分も経過すると腰から肩にかけてサウナに入った感じでポカポカしてくる(温熱効果)
 
◆症例10:Sjogren Syndrome (図13)
治療経過:病院内科でSjogren Syndromeの診断を受け、2004年11月からエボザック(R)(第一製薬)を3C/日を内服するが、6ヵ月間にわたって症状は改善せず、毎日、水や飴が必要であった。2005年6月、当院来院時には歯周病とう蝕が多発していた。
サリグレン(R)(日本化薬)を3C/日を投与しながら耳下腺に照射(2回/週)を行い、2週間後には顔の潤い感が増し、水や飴が不要になったため、投薬を2C/日に減量した。
3週間穣には、耳下腺および顎下腺照射も開始し、投薬を1C/日に減量した。6週間後には、サリグレン(R)の投薬を1/2C/日に減量し、8週間後にはサリグレン(R)の内服を中止することができた。

考察

 ジアテルミーの臨床応用は、歯科口腔領域ではまったく初めての試みであるが、他科ではかなり以前(約100年前)から研究され、活用されてきたことがわかっていただけたと思う。
 筆者の用いている 『COSMO i cure』は、周波数(510KHz)から分類すると外科的ジアテルミーを主体とした電気メスである。しかし、導子(アンテナ)から電磁波を飛ばすと超短波の生物学的特性を発生し、強い電界作用が得られるという特徴を有する。これは、これまでの内科的ジアテルミーの周波数の盲点をついたものであり、外科と内科の両特徴を有するハイブリッドジアテルミーともいえる。
以下に、ジアテルミーの効果といくつかの間題点について考えてみる。

1.ジアテルミーの効果

 ジアテルミーには、温熱効果と非温熱効果がある5)。
 1)温熱効果18〜20)
  (1)微少血管の拡張
  (2)神経伝達速度の上昇
  (3)痛覚閾値の上昇
  (4)筋力の変化
  (5)酵素活性の促進
  (6)軟組織の伸展性の増加

図14
至適線量を超すと、逆に抑制的に働く。たとえば、適度な機械刺激であれぱ子どもの骨性成長を促ずが、強ずぎると変形や骨折を起こすのと同様である

表4
 Schliephakeの分類
 2)非温熱効果
  短いパルスで、低い周波数、短時聞でジアテルミー照射を行うと、温熱効果はそれほどみられない。これは、照射によって温度上昇が起きても、次のパルスの間に血液環流で温度が拡散されるためである。しかし、温熱効果と同様の生物学的作用を有することは報告されている21)

(1)微少血管血流量の増加
Mayrovitz (1995)22,23)は、 PSWD(パルス型短波ジアテルミー)を用いて糖尿病性潰瘍患者の潰瘍部と被験者で局所の微少血管血流が増大することを報告している。局所循環が高まれば、局所組織の酸素化、栄養素の取り込み活性、マクロファージの貪食作用も高めることができる。

(2)細胞膜機能と細胞活性の変化
電磁場は、細胞膜へのイオン結合に影響を与え、線維芽細胞と神経細胞における成長因子の活性化とマクロファージの活性化の引き金になるといわれている24〜29)
また、PSWはCaイオン結合を変化させることにより、細胞周期の調整に影響を与える。電磁場に曝すことにより、細胞の成長と分裂が遅すぎる場合は促進させ、早すぎる場合は抑制することも知られている30,31)
以上の理由から、下記のような臨床的適応症が挙げられる。
(1)疼痛と浮腫のコントロール
(2)鎮静作用
(3)創傷治癒の促進21)
(4)神経損傷の治癒促進
(5)化骨促進作用33)
特筆すべきは、すでに1971年に犬の抜歯窩での化骨実験33)が行われており、近年にはPillaが磁場や超音波が骨成長と修復に好結果をもたらすと報告していることである34)

2.ジアテルミーの照射適用量
 ジアテルミーの照射時間・強さと生体反応については、Arndt-Schulzの法則 (図14)5)が引用され、一定の刺激(強さ)がないと期待する効果が発現しない。また、至適容量を超えて用いた場合には、逆に抑制的に作用して組織の変性・火傷が生じる。現在、各種口腔疾患別に至適線量を検討中である。
照射部位の温度上昇を実測することが困難なため、M.Shiidaら17)は現在もSchliephakeの分類表を参照しており、筆者も臨床的に便利なので多用している (表4)。

図15
 電磁場の強さと導子の距離関係
 
図16
 送電線の下で蛍光灯が光るのと同じ原理である
 
 

3.電磁場強度と距離の関係
 可視光線の光と同様に、距離の二乗に反比例する(図15)5)。したがって、絶縁チップ(導子)を病変部にできるだけ接近させると効果は大きい。

4.内科的ジアテルミーの患者への説明
 内科的ジアテルミーを施す前、あるいは処置後すぐに効果が発現し、患者にその作用機序の説明を求められたときに苦慮するといった話をよく聞くので、筆者が行っている効果的でインパクトを与える説明方法を紹介する。
まず、蛍光灯(W数、直管またはサークル球など種類は間わない)にジアテルミーアプリケーターを当てる。すると、すぐに当てた部位を中心に蛍光灯が光り出す(図16)11)。これは高周波(電磁波)によるもので、このエネルギーが局所温度を上げ、痛みを取るのだと説明している。
 この原理を簡単に謹明すると、蛍光灯は使用状態でなくても管内には少量の電子が存在
しているため、磁界により電子が加速され、管内に封入されている水銀原子が衝突し、紫外線を発生する。この紫外線が管内に塗った蛍光物質に当たり、可視光線を発するのである。

◆     ◆     ◆

 以上、気になる問題点に考察を加えながら解説したが、ハード面では(1)電磁波のシールドの問題、(2)導子の形状、(3)パルス間隔など、今後の検討課題も多く残されている。
 多くの基礎的・臨床的研究をもとに考えると、やはり高周波電気治療の真髄は内科的ジアテルミーにあると思われる。これまで遅れていた歯科領域においても、ハイブリッドジアテルミー型装置の特徴を生かし、さらなる研究と実績に基づくエビデンスを積み重ねる必要性と無限の可能性を感じている。

おわりに

 1895年、中波を用いて内科的ジアテルミーとして開発されたが、火傷のおそれがあり、外科的ジアテルミーに転用された。その後、短波、超短波、マイクロ波と波長の短いジアテルミーに移行していくなかで、今回は、発見当初の生物学的作用の強い中波(longwave)に内科的ジアテルミーの作用を見出したことには価値があると思われる。
 また、抗生物質が開発され、とにかく薬剤万能になりがちな風潮にあるが、薬剤耐性菌の問題、患者の投薬に対する意識の向上、薬剤投与が好ましくない妊婦や高齢者、あるいはとくに歯科領域での薬剤がほとんど効かない疾患や硬組織疾患などには、LDDSと併用した理学療法(高周波治療)が見直されるべきではないだろうか。

   
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