ファイルに機能を集約し、根管処置を効率化
コスモエンドシステム




Yoshikazu TAKEUCHI
竹内義和
●和歌山市・開業


◆はじめに

 本装置(図1)は、電気的には高周波電流発生装置(図2左)と超音波振動発生装置(同右)の2台から成っており、さらに電気抵抗測定装置が付随するものである。とくに、エンドを安全かつスピーディーに処置できるように、1本のハンドピースに取り付けたファイルに各々の機能を集約し、作業効率を上げている。本システムの機構として、表1のような事項があげられる。


図1 コスモエンドシステム

図2 左:CM-009C、右:CM-016C

表1 コスモエンドシステムの概要とメカニズム
   
◆高周波部
 一般には電気メスとしてよく知られている高周波電流を"歯内療法" の分野に応用している。

高周波メスの動作原理(図3)
 本機はアースなくしては作動しないので、マニュアルではユニットにアースを取っているが、必ず通電のよい口腔粘膜に排唾管で取る必要がある。

高周波電流の変調波形
 コスモデンタルサージ「CM−009C」は外科的組織の切開を目的とする全波整流型波形(A)とエンド使用を目的とする半波方形型整流波形(B)を併用しているのが特徴である(図4)。とくに(B)波形使用時には、タイマーが同時に連動するように設定されている。根管内組織にチップ先端が接触すると、歯髄組織は瞬間的に200〜250の高温に達し、歯髄組織を焼却し、かつ乾熱滅菌ができる。

◆超音波部
 超音波でよく利用されている周波数は15〜40KHz(とくに28KHz)で、本器でも、この領域のボルト締めランジュバン型振動子(ファインセラミックスの圧電素子−ピエゾセラミックス)を使用している。本機に使用している圧電セラミックスは、水晶に類似の周波数特性を有する。

図3
 基本的にはコンデンサとコイルを並列につないだ回路で発生させる
 
 

図4 搬送波(A)、変調波(B)
超音波振動の発生原理(図5)
 圧電素子(ピエゾセラミックス)に交流電圧をかけ、発振器の周波数(F)を変化させて、圧電素子の持つ固有周波数に一致させると圧電素子は強く振動し始める。この一致した周波数が共振周波数である。振動子に発振器より振動子のもつ固有周波数(40KHz)で発振させると振動子は非常に強く振動する。この時の周波数は40KHzではなく、取り付けるファイルとファイルホルダーの形状、長さにより変動する。インピーダンスが零位相になる2つの周波数の指示する共振、反共振の最大値双方を電気的にキャッチして瞬時に同調できるオートチューニング方式になっているが、手動のFINE TUNINGが必要である。本器を使いこなす一番のポイントであり、また、煩わしい欠点でもある。
図5 

図6
 C付属のレンチ目盛でファイル長を21〜22mmに設定する
 
図7
 CM-016CのFINE TUNINGの部分。ファイル長を21〜22mmに設定すれば、10〜14時の範囲でTUNINGが可能
 
 21〜22mmに設定すれば(図6)、10〜14時の範囲(図7)でチューニングが可能になる。スケーラーチップと拡大用チップの周波数差が大きいため、拡大洗浄と歯石除去のFUNCTIONは分離されている。21〜22mmの長さで、ファイルを設定(図6)したものを、多数用意しておく(図8)と便利である。
図8
 ファイルフォルダー(CF-6-黄)はPASS-FINDER用。緑は#10〜40用。青は#45用以上に区別されている
 
◆使用法
 以下、臨床例に即して、実際的な取り扱いについて述べる。
<拡大洗浄>
 現在市販されている数種の根管拡大器では、使用ファイルの太さ、長さによって出力変動が著しく、出力を上げるとファイルがすぐに破折するものが多く、根管内洗浄のみに使用しているのが現状のようである。本機では、自動同調方式を採用することにより、ハンドピースに取り付けたファイルの太さ、長さを記憶し、同調の具合をB周波数同調インジケーターにすばやく表示させる。まったくといってよいほどファイルの破折はない。
 ファイル#15以下は、POWER2.5位、ファイル調整はTUNING DIAL 10〜14時の間で同調(図7)、B周波数同調インジケーターの表示は多いほうがよいとマニュアルには記載されているが、術者自身の耳で確認したほうがよい。必ずしも一致しないからである(図9)。FINE TUNINGは無注水下で行い、音で確認するのが最良で、スケーラーのように視覚でCAVITATIONを確認しても至適条件は作れない。同調後の注水量は発熱とファイル破折防止のため多いほどよい(図10)。

図9
 INDICATOR SEGMANTは、緑、オレンジ、赤と順次多くなっていくが、同調部位と必ずしも一致しない
 
図10
 正確なTUNINGさえすれば、U-ファイルで歯根の切断もできる

 
図11
 ZIPPERER(社)U-ファイル


 
図12
 POWERをMAXIMUM(5)にすれば、セメント質に文字が書けるほど強力である。スケーリングには、POWER2〜3で十分利用できる
 
<根管内洗浄>
 U-ファイルはPIAS,MANI、ZIPPERRERなど各社のものが使えるが、ZIPPERRER社のもの(#15〜30)がもっとも相性と効率がよいようである(図11)。

<スケーリング>
 注水ONの状態で、POWER INDICATORをMAXIMUM(5)にて、CAVITATIONで最適条件を確認後、POWER DOWNで使用すればよい。本機では、スケーリング効果は弱いように記載している文献も出ているが、POWER5で、TUNINGを正確にすればセメント質に文字が彫れるほど(図12)POWERは強い。
 CHIP先端は、当然のことながら摩耗し、短くなるので、FINE TUNING DIALで共振部位を調整する必要がある。
<抜髄>
 出血がほとんどなくなる点が最大のメリットである。インフェクションコントロールの点からも、出血をともなわずに抜髄できるのは医療従事者にとってはありがたい(図13、14)。
図13
 高周波凝固により、ファイルで形成してもほとんど出欠らしきものは付着していない
 
図14
 #15Kファイルを入れ、チップの先端を接触させ、通電する。大臼歯では、通電時間1.0秒で1根管につき3回通電する
 
<EMR>
 根管内に挿入した挿入針(リーマー、ファイル)の先端が歯根膜に到達した時、リーマー、ファイルと口腔粘膜との間の電気抵抗は、患者の性別、年齢、歯種、根管の太さにかかわらずほぼ一定の値(40μA)を示すことを利用した古典的なものであるが、測定毎の"50μA ADJUST"の必要がなく、AUTO ADJUST回路になっている。しかし、本機使用に先立ち、シェーマ(図15)と根のAPEXは一致していないので、どの程度でAPEXかを確認しておく必要がある。

<PASS FINDING TECHNIQUE>
 PASS FINDER(Kerr社)CS25mm、K2の手用ファイルのヘッド部分を焼いて、シャンク部分を伸ばして使用する(図16)。
図15
 根尖部分(30〜38μA)を電気的に拡大して、音で術者に知らせてくれる
 
図16
 PASS FINDER(KERR社)、CS25mm、K2
 
図17
 メスチップ SG-1
 
<滅菌>
 従来の薬物・化学的滅菌からジュール熱を利用した物理的滅菌への発想の転換は大きい。とくに、根充時の不注意などによる唾液などの汚染は、超音波洗浄後の高周波滅菌で容易に対処できる。
 形成・洗浄後、最終ファイルをアピカルストップに挿入固定、ハンドピースに取り付けたファイルを接触させ、数秒通電させる。この操作で、根尖部の乾燥・滅菌、側枝・細管内の軟組織の固定が可能となる。

<電気メス>
 POWER DIAL5〜6の数値に設定。POWER調節は下のINDICATOR SEGMENTでは設定できない。切れなければMAXIMUMまで上げても本体には影響しない。
(1)外科的切開、(2)切除、(3)止血、(4)歯肉圧排
 電気メスに交換しなくても、抜髄操作用処置で上記の(1)〜(4)の処置、とくに前歯部のGPや止血程度であれば短時間に利用できる。ただファイルが長いため、口唇などに触れると危険で、前歯部に限定すべきである。TIME LOCKは0.5〜1.0秒に設定して、短時間にくり返せば利用は可能である。

<残髄処置>
 抜髄後、後日根管充填時や感染根管の再治療時に時どき遭遇するケースである。通常は根管内あるいは歯髄内麻酔を施して、再度、ファイルを挿入するのであるが、歯髄の知覚を覚える点にファイルを挿入し、通電(0.5〜1.0秒)することで固定される。歯髄内に麻酔の必要もなく、麻酔の疼痛よりも瞬時の通電のほうが患者には楽なようである。

<生活歯髄切断法>
 乳歯および歯根端未完成歯の場合は止血が大変困難で、一部ではFCによる化学的固定(止血)も施されているようであるが、高位でメスチップ(SG−1赤)(図17)を接触させ、接触面のみを壊死固定する。固定というより、止血を目的と考えたほうがよい。本法は歯髄表面を高周波熱で焼灼すると同時に滅菌できるのが最大の利点である。

<知覚過敏の処置>
 高周波で、歯面表面近くにでた神経終末のみを焼灼あるいは固定するものである。効果が即効で臨床的にはありがたい。ただいくつかの注意点を守らないとトラブルを起こす。局所麻酔は不要で、逆に知覚をたよりに処置したほうが確実である。歯磨剤ペーストを歯面患部に付け、通電をしやすくする。数回通電後、エアーあるいはエクスプローラーで患部の反応を見ながら回数を増やす。ただあまり通電回数が多くなると歯髄壊死になるので、注意が必要である。歯肉部は簡易防湿をして十分に乾燥する必要があり、唾液が残っていれば歯肉にまで通電し、白く焼灼される危険性がある。
 インレーやクラウンの装着されている歯牙にも利用できないことはないが、金属性の修復物マージンが歯肉縁に達していれば、通電のため歯肉部が焼灼されるため不可能と考えたほうがよい。
 なお、高周波処置で症状が改善されないときは、Hysより歯髄炎の診断名のもとに対処するか、別の処置を取ったほうがよい。

<再感染根管処置>
 太めのファイル(U-FILE)#30〜40で十分な注水下で拡大し、ガッタパーチャや粉剤などの根充剤の除去は容易にできる。ガッタパーチャの除去が不可能なら、ユーカリソフト、GPソルベントなどの溶解剤を十分入れ、無注水下で溶解させながら超音波を利用する。筆者が使用し始めて2年以上になるが、U−FILEの破折はほとんどない。先端部の破折があり、ファイル長が短くなると、10〜14時(TUNING DIAL)の間で同調しなくなり、POWERが下がるのですぐ判別がつく。

<難治性根尖病巣>
 根尖病巣があり、滲出液や排膿があり、根充時期がなかなか決まらない症例では単根歯なら外科的に処置も可能であるが、複根歯の場合はてこずる症例である。
 リーマー、ファイル(#15程度)を穿孔させ、出力0、時間0.2秒で数回通電する。この操作1回で次回(2〜3日後)までに、根尖周囲組織の固定作用で滲出液がうそのように止まるのは価値がある。この時、あまり穿孔させて骨組織にまで及ばせてはいけない。

<FISSURE SEALANTの予防填塞>
(1)患歯の赤染め。(2)ロビンソンブラシでの清掃。(3)Uファイル(#30または40の腰の強いファイル)で、小窩裂溝の清掃。着色物および一部の軟化牙質まで除去できる。(4)F含有SEALANT(TEETH MATE)でSEALINGする。
<その他>
 注水装置は従来どおりユニット本体にジョイントして使用するが、噴霧式ポンプ(図18)を応用できるのも便利である。以前から、展示会などでデモ用の注水源として利用されていたものである。一度注水しておけば、数日間利用でき、キャスターを利用すれば各ユニットの間を渡り歩くことができ、一つのユニットに限定されない利点がある。

図18 噴射式ポンプ<倉又産業(株)>

◆まとめ

 ハード面と臨床面への応用を中心にその概略を述べたが、本機の用途は多岐にわたり、その活用法は大いに期待できる。とくに、高周波の歯髄への応用は今までにないもので、刺身、ハム、肉などで、高周波の焼却程度と時間との関係を十分トレーニング(図19)して、感覚をつかんでから臨床応用に臨むことをお勧めする。しかし多機能を有するため、パーソナルコンピュータ同様使いこなさなければ意味がない。

図19
 豚肉での焼却トレーニング。左より0.5、1.0、2.0秒焼却。根管内ではBLIND操作のため、明視下で十分感覚をつかんでおく