テーブルクリニック
日常臨床における小器械の応用




十勝歯科医師全会員
(スタディグループ火曜会)

北野 敏彦 ・ 渡辺 聡 ・ 阿部 祐一

はじめに

 日常臨床において私たちの治療の大半は歯科用器械を用いて診療にあたっている。しかし,医療の進歩と共に器械も進歩しているが,なかなか治療にうまく導入されず,昔ながらの処置を続けていることもしばしば。また,購入したにもかかわらず,ほこりをかぶっているケースもある。高額な器械もどんどん出回る様になってきた今日,はたして高額な器械を使用しないと良い治療は出来ないのだろうか。また,高額な器械をもっている人々は,十二分に活用しているのであろうか。小器械を最大限に生かし,日常臨床でいかにストレスを感じる事なく仕事をするには,どうしたら良いのであろうか。私たちが治療で行っている臨床の中から,この様な疑問点を解決するヒントがあればと思い報告する。

   
今回紹介する使用小器械は
1.ペリオエンドシステム(コスモトレード社)
2.kavoソニクシステム(kavo社)
3.アポロ95E(白水貿易)
の3器械について報告する。


図1 ペリオエンドシステム
 

図2 ペリオエンドの各種チップ
1.ペリオエンドシステム(コスモトレード社)
 この器械は"CM−009C"と"CM−016C"のペアが一体となったもので,この機械1台でエンドは勿論ペリオ,外科,ホワイトニング等様々な用途に使用出来る(図1)。
主な機能 
(1) 高周波抜髄
(2) 根管内殺菌
(3) 生切
(4) 知覚過敏処置
(5) 歯周病(ポケット内殺菌)
(6) 超音波スケーラー・ファイル
(7) 根管長測定
(8) 電気メス
(9) ホワイトニング,アフター,メラニン除去等
 この機械は,例えば,抜髄時に高周波抜髄(同時に根管内の殺菌・消毒が行われる)そのまま根管拡大(超音波の機能に切り替えて)根管洗浄をし,根管長測定までのマルチ機能を持っている。また,電気メス,超音波,EMRが1台に集約し,全てをチップの交換で行うことができる(図2)。
高周波発生装置と理論

 高周波電流の利用方法には,その発熱する様式の違いで誘導加熱と誘電加熱とがある。前者は,歯科用としては高周波鋳造器に利用され,後者は電気メス等に利用されている。
 本装置は,後者であり,どちらもジュール熱の法則で熱が発生する。高周波電流の応用で日常慣れ親しんでいるのは,電気メスでありその創傷の治癒の良好さは周知のところである。
 ペリオエンドシステムは,電気メスの変形である全波整流型波形と,その変形である半波方形型波形の高周波電流の双方を兼ね備え,それぞれの波形をスイッチの切り換えで発生できる装置である。半波方形型波形の方を利用して感染根管における根尖病巣部の殺菌を行うことができる。また,この波形を根光部の病巣部に使用しようとすると,術者が時間的に出力を制動しなければならず,非常に神経を使って操作しなければならないため,この高周波発生装置に0.1秒刻みのタイマーを付け,尚かつその波形を半波方形波形として(図3)無理なく組織に浸透されるようにした。この半波型波形の,周波数は約500khzの断続的出力波形であり,0.1秒間に約10パルスを発生する。これによって,病巣部に同じ長さの時間で高周波電流が流せるようになった(図4)
1)

図3 半波方形型波形
 

図4 高周波の理論
高周波治療の手技(術式)

(1)麻酔抜髄
 ペリオエンドで行う場合,麻酔抜髄におけるステップは根管口明示〜仮封までを一体化したもので抜髄処置における高周波電流(焼灼),超音波拡大,EMRを全て#15Uファイル1本で行うことが出来る(図5)。#15Uファイルで根管の壁面に沿って約1分間くらいなぞるだけで#30〜#35クラスのファイルが入る程度の拡大をすることができる(図6)。しかも,拡大前に通電することによって抜髄時におきる出血を少なくし,術後の疼痛を軽減することができる。また,抜髄時における高周波電流の通電は根尖付近までファイルを持っていかずとも,歯冠側にファイルを入れるだけで歯髄の焼灼はできる。この方法を用いる事によって従来の抜髄操作よりも安全で確実な抜髄ができる様になった
2〜16)

図5 麻酔抜髄
 

図6 抜髄の手順
 

図7 感染根幹治療のポイント
 

図8 フェステルへの応用例
 
(2)感染根管治療
 高周波電流を歯髄や歯肉及び病巣部等の軟組織に通電すると,誘電加熱として200〜240℃の高温を発生する。この特色を感染根管の根尖病巣部殺菌に利用する方法で,本法は,電気歯髄焼灼法の予後の良好さに基づいて考えられた手法の一つである(図7)。
 また,本法は従来行っている根管拡大や貼薬操作による細菌の消毒,殺菌を熱で代行しようと考える方法であるが,決して拡大操作や貼薬を軽視したり無視するのではなく,その効果を助長または,補助する一つの方法として考えられている
17),18)
 本法は,主に根尖病巣部の殺菌を熱により行う。従って根管の象牙細管内の細菌は,超音波により洗浄し,象牙細管のスメア一層をきれいに除去する必要がある19),20)
 新潟大学歯学部歯科保存学第一講座で行われた基礎実験では,本装置の半波方形波形を使用し100Wの出力で0.3秒間高周波電流を通電すると細菌が1/100程度に減少したという報告をしている。
 通法の貼薬を何度となく繰り返し行っても,症状の回復がみられない症例,いわゆるアクチノマイシスイスラリエリのような細菌に起因している難治性の根尖病巣などに悩ませられてきたが,ここ数年来この高周波電流による殺菌法を行うことにより,それらの症例が,抜歯や外科処置に至ることが少なくなったことを実感している。また,フィステルなどの症例(図8)に対して直接高周波通電によって組織を破壊することなく患部を殺菌することができる。
高周波のぺリオの応用

 高周波電流のペリオポケット内での通電において,ポケット内の細菌は,高周波の熱によって殺菌される。特に急発生の歯肉炎の消炎に対しても,その殺菌効果によって消炎することができる。ポケット内の殺菌効果を判断するためにペリオチェックを用いて通電前と通電後(図9)を比較してみると,明かにポケット内が殺菌されたことがわかる。今までなら切開するケースにおいても,ペリオエンドのポケット内通電のみで処置することができ,以前とは違った対応をすることができる。

図9 ペリオへの応用例
 高周波の特徴としてポケット内で通電している時,正常な歯肉ポケット部では,痛みを感じるが,炎症を起こしたり,排膿しているポケット内では,痛みを感じないという特徴がある。これによって通電によるポケット内の治癒の状態を把握できる。ペリオ応用例として症例を紹介する。

図10 症例1

図11 症例1
 症例1は,21歳,女性,上顎口蓋部全体の腫脹感のため来院(図10),歯列全体の腫脹のため,切開を行わず,ポケット内に高周波通電を行い1週間に2度来院して,通電を行うのみで症状は軽減したので(図11)その後ポケット内のスケーリングを行う事で終了した。
 症例2は,22歳,女性,上顎右側切歯の歯冠補綴物のマージン部の不良のために腫脹感を主訴として来院(図12)。症状軽減の為にポケット内をペリオエンドで通電を行う。2週間後には,症状がひいてきた。


図12 症例2
 症例3は,12歳,男性,前歯部の腫脹発赤の為,来院(図13)。前歯部歯間乳頭部の発赤,腫脹がみられので,比較対称の為,正中部のみペリオエンドにてポケット内の通電を行った。2週間後には通電した部位の腫脹は消えたが,していない他の部位は,発赤腫脹したままである。

図13 症例3
ペリオエンドシステムにおけるその他の使用

(a)知覚過敏処置(図14)
(b)漂白処置(図15)
(c)アフターの改善(図16)
(d)電気メス(図17)

 特に電気メスは,従来の専用のチップの他に通常歯内療法で使用しているブローチを使ってそれをチップの代用として使用する事ができるため,感染防止対策として電気メスを活用し易い。また,今までの電気メスとは違い,止血効果がある為,切除した部位での出血量が少ない為,印象や処置において,出血で悩む事は少ない。

図14

図15

図16

図17
 止血効果の一例として症例4(図18)は,71歳,男性,口臭を主訴として来院。患者は抗血液凝固剤を服用の為,出血し易く,日頃なかなか血が止まらない事を実感していた。口の中は,歯全体からの出血の為,初診時は出血部位を特定することが難しかったが上顎左側大臼歯部に大きな歯肉の腫脹と歯牙動揺があり,同部位での出血が一番多いと判明した。その為,上顎左側第一大臼歯の抜歯と隣接する歯肉の腫脹を切除した。その後,ペリオエンドにて同部位を焼灼して,止血をし,圧迫ガーゼをあてたまま帰宅させた。翌日には,同部位の出血はなく,1週間後には歯肉部は治癒した状態となった為,出血に注意しながらスケーリングを開始した。

図18 症例4
 
2.ソニクシスシステム

 ここ数十年間,形成の主役は,回転器具であった。この間,器具類の容易な操作やダイヤモンドバー,それにマイクロモーター等に関する研究開発が行われてきた。しかし,重要な問題は,未解決のまま残っている。それは,即ち隣接マージン域の形成の問題である。接着の分野では,歯質ボンディングエージェントの開発は,臨床上の数多くの問題を解決した。
しかし,回転器具における形成の問題や,隣接歯を傷める問題は解決したとはいえない。ソニクシスは,従来の回転から振動器に代えることによって,隣接歯を傷つけることなく,限られた窩洞のマージン部の形成を行うことを可能にした。しかし,ソニクシスは回転器具にとって代わるものではなく,回転器具では届きにくい所か,形成しにくい所を補う様な点で適用に大きな効果が現れる。今回は,ソニクシスシステム(図19)の多くのバリエーションの中から,ソニクシス マイクロとソニクシス アプロクスの2つの振動形成の特徴について報告する。

図19 ソニクシスの種類
ソニクシス マイクロ
 このソニクシス マイクロはスケーラーのチップの先の片面がダイヤモンドでつくられており形成側ダイヤモンドチップは先がふくらみ,外側は研磨されている。形状は魚雷型,小半円型,大半円型の3種類からなり,隣接面は半円型が適している。次に症例で使い方を説明する。
症例5(図20)14歳,男性,
隣接CR充填。
症例6(図21)12歳,女性,
隣接CR充填。

図20 症例5.隣接面へのCR充填

図21 隣接面へのCR充填
(チップは近心用と遠心用とがある)
症例のコメント
前歯隣接面のカリエスの場合,隣接する面をキズつけずに形成することができる。
ソニックシスで最初からエナメルを含めて形成することが出来る比較的浅い窩洞ではコンポマーを充填して処置する。(無麻酔)
隣接カリエスでは,通常のバーで形成すると,隣接歯を傷つけるケースが多い。
症例7(図22)
上顎右側第1大臼歯の遠心歯頚部カリエス。上顎臼歯遠心面カリエスは通常タービンではうまくウ蝕部位を削ることは難しく,また,形成して充填までは行わず,インレー形成にて修復するケースであるが,ソニックシステムを用いることで,ウ蝕部分のみを削除し,充填することができる。しかも,ソニックの振動では通常なら痛みの起きる大きなケースでも,無麻酔で削ることができる。

図22 症例7
遠心歯顎カリエス
ソニクシス アプロクス

 クラスTT窩洞の治療をコンポジット材で行う場合,数多くの難しい問題,中でも"高度なテクニック"を必要とする問題が生じる。歯肉緑と隣接面のコンタクトポイントを良好に仕上げることは,最も難しい問題である。ソニクシス アプロクスはこうした問題を解決してくれる。アプロクスチップはコンタクト部を正確なBox形成をし,その形成に合ったセラミックブロックを合わせることで,隣接部の修復をきちんと適合させることを可能にしたシステムである。
 次に,その症例を示す。
症例8(図23〜図24)23歳,女性,上顎右側第一小臼歯の隣接面カリエス,ソニクシスシステムでBoxを形成し,セラミックインレー体を合わせてコンポジット充填した。充填にあたっては,セラミックインレーとの接合部はフローの良いコンポジットを用い,他の部位は硬めのコンポジットレジンを使用した(図24)。

図23 症例8 ソニクシス アプロクスシステム

図24 症例8 アプロクスの手順
症例9(図25〜図26)26歳,女性,下顎左側第一小臼歯の隣接カリエス,ソニクシスシステムで,隣接部のみ形成しセラミックインレー体を合わせて,接合にフローの良いコンポジットを用いて修復した。

図25 症例9

図26 症例9
   
3.アポロ95E光重合器(図27)

 アポロ95E光重合器の登場によって,診療室における充填に変化が表れた。それは,光重合用レジンの重合時間を30秒から3秒に短縮したことによる。しかも,重合時間の大幅な短縮により充填材の収縮や内部ストレスも大きく軽減され,適用部位が重合中に唾液や血液で汚染される危険性が少ない,コンポジットに合った波長のため(図28)コンポジットレジンをより硬く硬化させる。レジンの積層時の時間の短縮はもとより,診療中のストレスの軽減にもつながるものである(図29)。

図27

図28

図29
まとめ
 以上,3つの器械についてその使用方法,特徴,効果について報告した。診療室においてのストレスの軽減は,先生それぞれが工夫されているもので,この3つの器械で達成されるものではないが,小器械でも大きな器具に負けない機能を持っている。また,その使い方いかんで何十倍もの力になる事を,日々の診療で感じる時がある。
   
参考文献
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